あめ
久遠寺涼子はどことなく奇妙な雰囲気の女性だった。
人並みはずれて奇妙と呼ばれる私が云えた義理ではないが。
しかし、もっと奇妙なのは、タツ兄がいつも以上に可笑しな振る舞いをしていることだ。
あのタツ兄が、自分から事件解決に尽力するなんて。
岡惚れかしらん。
涼子さんは悲しげな顔で首を傾げた。
「あなたは、子供を産むのね。」
「産む気は、あまりありません。それに、産むには相手が必要ですよ。私をお嫁に貰ってくれる人がいたら、お目にかかりたいです。」
「あの、探偵の方、榎木津さんと仰ったかしら。あの方の子を、あなたは産むのね。」
「・・・なにを仰っているのだから、わかりかねますが。」
涼子さんはますます悲しそうな顔をして、私の腹に手を当てた。
「いけない子ね。あなたも、罰を受けなければならないわ。」
「はい?」
何を云っているのだか、皆目見当もつかない。
けど、
「もうすぐ、ここに憑き物落としをする人が来ます。」
この人に憑いているのは、姑獲鳥か。
「あの人が来れば、全てが白日の下に晒されます。」
そう、秋彦兄さんなら。
兄さんなら、全てを明らかにしてくれる。
そして、私に憑いているモノも、
ちりりん
風鈴の音が聞こえた。 |