いぬとねこ
あたしは、よく猫に似ていると言われます。 なんか、目が釣り目だとか、ちまい(身長152cm!)とこだとか、陽だまりでよく居眠りしているところだとか、色々理由をあげられます。 それでもって、あたしの彼氏は、よく犬に似ていると言われます。 なんか、大きくて、人懐こくて、感情表現が豊かなとこをあげられてますね。 だから、あたしとあたしの彼氏は、犬猫コンビと呼ばれます。
「にゃん。」 「・・・ええと、どうしたの、さん?」 「あたしは、猫なのです。」 彼氏の鳳くんは、はぁ、と変な相槌を打ちました。 あたしはにゃんにゃん、と言いながら、鳳くんの周りを飛び跳ねます。鳳くんは背が高くて足が長いから、あたしよりも歩くのが速いです。だから、鳳くんはいつもゆっくり歩いてくれます。そのおかげで、あたしは鳳くんの周りをぐるぐる回っても、あまり疲れないのです。 「にゃんにゃんにゃん♪」 「サン、ホント、どうしたの?」 くるくる回るあたしの襟首を軽くつかんで、鳳くんはあたしをくるりと回します。あたしは小さくて軽いので、鳳くんは簡単にあたしを持ち上げたりだっこしたりおんぶしたりできます。だっこしてもらうのは好きなので、そういうときはちっちゃい自分に感謝です。 でも、こういうときはイヤなのです。鳳くんの目を見るのに、めいいっぱい首を上げなきゃならない。首が痛くなるからイヤです。 すると、鳳くんはちょっと腰をかがめて、あたしが大変じゃないくらいのところに顔を持ってきてくれました。 「あたしは、猫なのです。」 「猫?」 「そう、猫。猫みたいだと言われたのです。」 なるほど、と鳳くんは頷きます。 「うん、小猫みたいに、かわいいもんね。」 鳳くんにかわいいと言ってもらえるのはとても好きなので、あたしはにっこり笑いました。 でも、すぐに悲しいことを思い出して、あたしは悲しくなりました。 「でもですね、鳳くんは犬なのです。」 「犬?」 「はい。宍戸先輩や、跡部先輩が仰ってました。」 「・・・・・・それで?」 なんだか鳳くん、怒っているみたいです。 あたしは悲しくなりました。 「ああ、さんを怒ってるわけじゃないんだ。心配しないで、続きを言ってみて?」 「怒ってないですか?」 「うん。さんには、怒ってない。」 あたしはまたまた嬉しくなりました。 「で、俺が犬だと、なにか悲しいの?」 「犬と猫は仲が悪いのです。」 犬は猫を追いかけます。 猫は犬の鼻を引っかきます。 「だから、あたしが猫で鳳くんが犬ならば、二人は仲が悪くなってしまうのです。」 それはとても悲しいのです。 そう言うと、鳳くんはにこりと笑いました。 「大丈夫。どんなであっても、俺はさんのことが好きだから。たまには、猫のことが好きな犬がいたっていいだろ? ほら、犬のおまわりさんだって、迷子の小猫のために頑張るじゃないか。」 「あ。ホントだ。そうですね、じゃあ、鳳くんは、犬のおまわりさんです。」 「小猫のさんが今みたいに道に迷ったら、必ず助けるから。困らないから、大丈夫だよ。」 「ありがとうです。お礼に、鳳くんが迷ったら、あたしが頑張ってお助けします。」 「うん、お願いします。」 手繋ごうか、と鳳くんが左手を出したので、あたしは大きく頷いて鳳くんの大きな手に飛びつきました。鳳くんの手は大きいので、あたしの手がすっぽり入ってしまいます。
大丈夫です。鳳くんの手は大きいから、必ずあたしを助けてくれます。 |