ある日のコマ  

 

 

 

 

は、本当に城之介のことが好きなのね。」

 乙姫にそう言われて、私はにっこりと笑った。

「うん、大好き。」

 乙姫は大学のときのあたしの友達。乙姫の方は事故で下半身不随になってから大学を中退しちゃったけど、それでも在学中は仲がよかったので、その後もちょくちょくと連絡を取り合っていて、今でもあたしはたまに龍宮家にお邪魔する。

 そして城之介くんというのは乙姫の弟さん。JDCという組織に所属している人で、探偵を生業にしている。探偵の知り合いなんて今までいなかったから会ってみたいな、となんとなく言ってみただけなんだけど、乙姫はそれを覚えていて、あるとき城之介くんが休みのときに家に誘ってくれて、それから城之介くんとも顔を合わせれば挨拶くらいする仲になったんだ。

 で、一人の人と知り合いになると、その人の友達とも知り合いになることは結構あることで、あたしは城之介くんの数多い探偵仲間とも顔見知りになってしまった。これだけ探偵の知り合いがいる作家っていうのも、珍しいんじゃないかな。

さんって、変わってますね。普通の女の人って、そこで照れるもんなんじゃないんですか?」

 乙姫の年下の彼氏、氷姫宮くんが苦笑しながら言った。彼も探偵さん。今日は事前になにも言わずに龍宮家に乱入しちゃったから、二人の久々の逢瀬を邪魔しちゃったかな、って思ったんだけど、氷姫宮くんは逆に久々にお会いできて嬉しいですよ、って言ってくれる。なんていい子なんだ。

「氷姫宮くん。乙姫の親友、っていう時点であたしは十分に変わってるんだから、今更だよ、そんなこと。」

 大学でかなり達観しているということで有名だった乙姫には、友達らしい友達がいなかった。あたしも最初はおっかなびっくりで話しかけてみたんだけど、いつの間にか意気投合して仲良くなっちゃって、周りからはかなりの変人扱いされたんだよね。

 いわく、類は友を呼ぶ。

「なら私は友ね。友は類を選べないというから。」

「ちょっと乙姫! それどういうことよ。乙姫が類に決まってるわよ。乙姫に会うまで、あたしはかなり平々凡々な人生を送ってきたんだから。乙姫と友達になってから、探偵なんていうやくざな商売やってる人たちとも知り合っちゃったんだから。」

「酷いな、嬢。龍宮たちをやくざ呼ばわりか?」

「そうよ。サラリーマンと違って、全然安定してない職業じゃない。まあ、城之介くんや氷姫宮くんくらいなら、かなり高収入だろうけど。」

嬢の作家という商売も、かなり不安定だと龍宮は思うのだが?」

「そーなのよー。失業保険も退職金もボーナスもないんだもん。老後はどうすればいいのかしらん。」

 しくしく、と泣き真似をすると、三人とも楽しそうに笑ってくれる。

「大丈夫だぞ、嬢。嬢が筆を折っても仕事をやめても、竜宮にはきちんと退職金が出るからな。老後の苦労はさせないさ。」

「え、ホント? わーい、じゃあ今のうちに自分のお金で贅沢して、老後は城之介くんのお金で豪遊しようっと。」

「ううーん、そこまで当てにされても困るけどなあ。」

「冗談よ冗談。人を頼りにするだけの女じゃないもの、あたし。」

「うん、それでこそ竜宮の好きな女性だ。」

「えへへ。」

 

 

「乙姫さん、やっぱりさんって、かなり変わってると思うんですけど。」

「私のお友達だからかしら。」

 

 

反省会
  前回の竜宮ドリとはまた180度方向の違う話だなあ。
  実を言うと、これは城之介ドリというよりも乙姫ドリくさいという噂も無きにしも非ず・・・。乙姫好きなんだよなあ。頭のいい女の人って、かっこいいからね。憧れます。
  
ただのバカップルに見えなくもない。二人がボケて、幽弥くんが突っ込みで乙姫は傍観。ううむ。

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