たでうむしも

 

 

 

 私の彼氏は、みんなから怖いって言われます。

「そんなことないよねえ。」

「うん。海堂くん、面白いよねぇ。」

「かわいいしねえ。」

「きれいだし。」

「あ、それはどっちかっていうと、不二先輩に当てはまるんじゃない?」

「え・・・不二先輩はぁ・・・・・・最高なの♪」

「うわ、始まったよ、ちゃんのノロケが。」

「いいじゃない。不二先輩、世界で一番かっこいいんだもん。」

「薫くんの方がかっこいいもーん。」

「不二先輩だもん!」

「薫くん!」

 ちょっと待った。論題がずれてる。

 ただいまお昼休み。今日は試験前だから、クラブはなし。久々に女の子友達で集まってお弁当。クラブがないときはいつも薫くんと食べるんだけど、今日は薫くん、何かの集まりがあるとかで先に食べて行っちゃった。

 別にいいんだけどね、お弁当くらい。帰ってくれば席は隣なんだし。

 でも、薫くんのお弁当、美味しいからたまにおかず交換するのがちょっと楽しみなんだけど・・・。

 閑話休題。

 で、女の子同士が集まれば、そりゃやっぱり恋の話なんかで盛り上がるわけ。とりあえず彼氏がいる奴ら、最近のことを吐け、って感じだったんで、彼氏持ちが順々にのろける。んで、私の番になった途端、私が口を開く前に、友達が『海堂ってちょっと怖いよね。、ちゃんと付き合えてるの?』なんて聞くから、ちゃんとついつい話が盛り上がる。

 かと思いきや、話が彼氏バトルになってしまったんで、ちょっと冷静になりましょう、って感じ。

「確かに、ちょっと無愛想で不器用で言葉足りないし目つき悪いけど。その、不器用なところが好きなの。」

 うんうん、私もちゃんと乙女してるじゃない。

「それに、薫くんの魅力がそんなにわかりやすかったら、ライバルが多すぎて困るよ。現にほら、ちゃんなんか大変じゃない。」

 ちゃんの彼氏は、青学一のアイドル、不二周助先輩。当然、やっかみも恨みもたくさん買ってるわ。

「そうかもね。ま、あんたらしいんじゃない?」

 それはどう意味かしら。

 ま、いっか。

 薫くんがかっこいい、って私がわかってればいいだけの問題よ。

「よかったね、ちゃん、幸せで。」

 ちゃんがにっこり笑う。その笑顔を見て、ああ、ちゃんも幸せなんだな、って私も嬉しくなる。

「うん。だって私、薫くんのこと、大好きだもん。」

「おい、。俺がどうかしたか?」

 あら。

 薫くんの帰還だ。

 因みに薫くんは、他の人がいるところでは私のことを、って呼ぶ。いつもは、って呼ぶけど、なんか人がいると照れくさいんだって。私は他の人がいても薫くん、て呼ぶけど。あ、さすがに部活の最中は海堂くんよ。いくらマネージャーだからって、部活中まで馴れ馴れしくしてちゃいけないもの。

 私とちゃん以外は、帰ってきた薫くんを見てちょっと緊張した感じになる。確かに、ちょっと睨んでるもんね。これが地顔なんだってわかれば、なんともないんだけど・・・。

 私はにこっ、と笑った。

「うん、薫くんがね、世界一かっこいい、って話してたの。」

 途端、

 薫くんは顔を真っ赤にして、

 ふん、って言って、

 そのまま教室を出て行ってしまった。

 どこに行く気なのかしら。手ぶらだから、どこに行ってもなにもできないだろうに。

 図書館かな?

 私が首を傾げてると、お弁当を食べる手が止まっていたみんな(ちゃん以外)は、じぃっと私を見ていた。

「なあに?」

「「「あんたが海堂を好きなの、なんとなくわかった。」」」

 あ、ハモった。

「ううーん、は見る目があった、ってことかなあ。」

「そうだねえ。私も、並に、男を見る目を磨かないと。」

「ああ、海堂がフリーじゃないのがもったいない! かといってと海堂が別れるとは思えないし・・・。」

 突然腕を組んで悩み始めた友人たちに、ちゃんは笑って答えた。

「大丈夫だよ。女の子には、いつか必ず、たった一人の白馬の王子さまが現れるんだから。」

 それを聞いた途端、

 白馬に乗った薫くんを想像してしまって、私は盛大に飲んでいたウーロン茶を吹いてしまった。

 

 





反省会
 白馬に乗った薫くんなんて嫌です。たまにはピンクな話が書きたかった。というわけで、フリーです。ちゃんと原作者メリー・アンの表記をお願いします。

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