羽化
その年その月その日その時間、あたしは学校にいた。 夏休みの特別補習授業を受けていて、昼食も食べ終わってこれからJDCにでも行くか、と考えていた。あたしの学校は府内でも郊外の方にあったから、JDCの壊滅の音は聞こえなかった。極々普通に、いつもの通り、鴉城のところに行こうと地下鉄に乗った。 虫の知らせ、とか。 嫌な予感、とか。 天啓のように振ってくる推理、とか。 そんなのは、全くなかった。 だから、JDCに、いいや、JDCがあったところに到着したとき、あたしは あたしは、
「中に入れろ。」 見張りをしているらしい警察官に言うと、彼は不審そうな顔をしてあたしを見た。 「お嬢ちゃん、関係者なんか? JDCの探偵さんかなんかなん?」 あたしの言うことをちっとも聞こうとしないので、あたしは無視して警官の横を通り抜けた。 「おい、あかんて。関係者以外、今立ち入り禁止なんやから。」 警官はあたしの腕をつかんだ。あったまにきたんで、あたしはそれを振りほどいて、知った気配が集まっている部屋を目指した。後ろから警官が追いかけるが、知ったことじゃない。 「鴉城! 一体何があったんだ!?」 会議室みたいなところに駆け込むと、そこには見知った探偵どもがたくさんと、刑事らしきやつらと、知らないやつらが何人かいた。 鴉城はいない。 血の気が引いた。 「仙人! 鴉城は!? 鴉城はどの病院に連れていかれた!?」 状況を見ると、捜査会議らしい。あたしを拘束しようとした警官たちを仙人が止める。あたしは久々に見る仙人(入院していた、と聞いたはず)のシャツをつかんだ。 だって、こんな事件の会議に、総代がいないわけがない。いないってことは、怪我をして、どこかに運び込まれたに違いない。 だから、仙人に抱きついた。 「なあ、鴉城は!? 鴉城はどこへ行った?」 「ちゃん、落ち着いて。よく聞いてください。」 仙人は、落ち着いているようで、なんだか動揺しているように見えた。 聞きたくない。 こいつは、あたしの聞きたくないことを言う。 辺りを見回す。誰もが(なんだか偉そうな男一人を除いて)、あたしから目をそらす。 癪だけど。 「ニーナ。鴉城はどこだ?」 サングラスの奥の目は、少し驚いていた。あたしが自分からニーナに話しかけるなんて、滅多にない。 「さん、鴉城さんは、」 消えました。
そして、
私は目覚めた。
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