そして俺たちは幸せになった
ちゃん、と呼んでもなんも言われなくて。 それ以外は、今までと変わらない感じで、けれども少し変わったのは、彼女の鞄を終が持ったことくらい。悔しいけれど、自分より経験豊富な次兄から、自然になにも言わずに荷物を持つこと、とアドバイスを受けている。やや強引に鞄を引っ手繰られたは一瞬片眉を上げたが、すぐになにごともなかったかのような顔をして、夕飯は? と尋ねた。 まだ、と答える終に頷き、自然にじゃあうちに来るか、と尋ねられる。 それまでもの家で夕飯を食べたことは何度もあったので、うん、となにも考えずに頷いてしまったけれど。 これって、やばいんでない? なにごともなかったかのように自然にの手料理を平らげ、なにごともなかったかのように後片付けを手伝って。なんの流れか、泊まっていくことになっていて。 な、なんの流れで泊まることになったんだっけ? ―――随分と遅い時間になったな。終、お前、明日なんか用があるか? 別に? なんもないよ? そうか。じゃあ、今から送っていくのも億劫だから、泊まっていくか? 「そもそもなんでちゃんが俺を送るんだよ! 逆だろ、普通逆!」 つい口に出して数分前の自分たちにツッコミを入れる。確かに少し前まで自分たちは教師と生徒、つまりは保護者と被保護者の関係ではあったのだけれど。それならば先程の会話も渋々ながら納得できるのだけれどっ。 「まだ、俺ってちゃんの中ではガキなのかなあ。」 まあ、確かに長男と同い年の彼女にとっては、自分は子供なのだろうけれど。 などと唸る三男坊を次男坊が見たら、途端に呆れた溜め息を吐いただろう。 普段は終が寝てから浴びるシャワーを、起きているうちに浴びている時点で少しは気付きなさい、と。 |