小舅と

 

 

 

 

、お前、終のことをどう思っている?」

 突然この鈍感男に直球で聞かれ、さすがの私も飲んでいたビールにむせてしまった。

「と、突然なにを言い出すんだ、竜堂始?」

「あ、いや、間違いだったら悪いんだが、その、お前が終のことを、憎からず思っているようなんでな。」

 阿呆かこの男は。

「間違ってるぞ、竜堂始。」

「そ、そうか。悪かったな、。忘れてくれ。」

「私は竜堂のことが大好きだ。」

 今度は竜堂始がむせる番だった。

「そ、そうなのか。」

「そうなのだ。」

 竜堂始はじっと私を見つめ、なにか言いたそうに逡巡してから口を開いた。

、お前のことは短くない付き合いだから信用してはいるが、一応言っておく。あいつがまだ高校生だってこと、わかってるよな?」

「わかってる。わかっているとも。だから、なにもしていないだろう?」

 それはほんとのことで、どんなに竜堂が構ってくれと甘えてきても、こっちがぐらぐらするようなことを無意識のうちに言われても、私はそれに気付かないふりをして、教師のふりをしている。

 それを、竜堂始が知らないわけがない。

「でもまあ、高校を卒業したら、もう生徒と教師じゃないんだぞ?」

「・・・それでも、一応俺の保護下にあるような年齢なんだがな。」

「過保護だな。」

「そんなつもりはないんだが・・・。」

「いや、褒めてるんだよ。ていうか、お前の弟どもが羨ましい。私は、いわゆる放任家庭で育ったからな。うるさいくらいに守ってもらえるのが羨ましい。あ、もしかして、竜堂家に嫁入りすれば、私も過保護に守ってもらえるのか?」

 ううーん、酔っているようだ。

「なにを言ってるんだ。は友達だろう?守るに決まってるじゃないか。」

 竜堂始は苦笑した。彼も相当酔っているらしい。普段の彼なら、照れくさくてこんなことは言わないだろう。

 そして言った途端、私にからかわれるんだ。なのにそんな事態にならないのは、私もたぶん、かなり酔っているから。

「そりゃ、ありがたい。ああ、それでも嫁入りは諦めないぞ。司先生には許可とっておいたしな。」

「は?」

「結構前に、三番目のお孫さんの嫁にしてください、っていったら、呵呵大笑しながら許してもらったんだ。」

「ちょっと待て、じいさんにそんなこと言ったのか?」

「言った言った。ただ、きちんと責任が自分で取れるようになるまでは駄目だって言われたから、ちゃんと待つぞ。あいつが独り立ちできるようになるまではな。よかったな、家長。弟はまだ当分出て行かないぞ。」

「まったく、わけのわからないことを。用意周到なんだか気が利きすぎるんだか。」

「はは。まあ、とにかくお前が嫁をもらうのより先だよ。だってお前、三人ともが自立しない限り、結婚しようと思ってないだろ?」

「それはそうなんだが・・・なんで俺のことになるんだ?なんだか、薮蛇のようなんだが。」

「気にするな。酒の席なんだから。ほら、もっと飲め。」

 

 そう、これは酒の席での他愛ない話。

 






反省会
 いや、一応友人同士なんだから、と思って書いてみた二人の話。一体いつ頃の話なんだか。
 そして彼らは一体どこで飲んでいるのか。因みに、主人公は酒にはそこそこ強い。そんなに強くないけど、自分の限度を把握して飲んでるからあまりみっともない風には酔わない。

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