亀姫夢話
物騒な男たちを振り切り、続は中野区の我が家に辿り着いた。本来ならを家に送るべきなのかもしれないが、彼らにを見られている以上、自分たちの関係者だと勘違いされてなにかされても困るので、竜堂家の家長の判断を仰ぐために一時帰宅したのである。 「ただいま。」 「あら、お帰りなさい、続さん、って一体これはなにごと?」 玄関を開けてすぐひよこマークのエプロンをつけた茉莉が出迎えた。 「デートの帰りですので。」 「あら、隅に置けないわね。」 茉莉はにこりと笑い、の顔をにさっと視線を向けた。 なにがあったのかは予想がつく。真っ青な顔をしている彼女を見れば。 「うん、じゃあまず、自己紹介ね。私は鳥羽茉莉。続さんの従姉妹よ。よろしくね。」 固まっているの靴を脱がし、茉莉は笑みを浮かべた。恐怖には笑顔が一番効く、と彼女は信じている。 それでも続がを床に下ろそうとしてもは続のシャツを掴んだ手を放そうとはしないので、続と茉莉は顔を見合わせた。 「ええーと、続さん、彼女、居間につれてってあげてくれるかしら。ホットミルクを作ってくるから。」 笑顔で足りなければ、人心地つく温かい飲み物が有効。 茉莉はそう信じ、続にを運ばせた。 「茉莉ちゃん、続兄さん、帰ってきたの?」 続がと共に居間に消えると、ちょうど余が階段から顔を覗かせた。 「ええ、帰ってきたわよ。それでね、悪いんだけど、始さんを呼んでもらえるかしら?」 自分のシャツを掴むを、慎重にソファの上に座らせた。それでも手を放さないので、続は珍しくその白い顔に困惑の色をのぼらせた。 「さん? 大丈夫ですよ。もう、大丈夫です。」 そう言っての手を撫でると、少しずつの手が緩む。 「続? どうしたんだ?」 そこに始と、ホットミルクの入ったマグカップを持った茉莉と、年少組が居間に入ってくる。 「襲われました。」 こわかった。 敵意と殺意とが混じった視線。 火薬の匂いと爆発音。 罵声と怒声とが響く。 心底、こわかった。 それでも、先輩がいる先輩が守ってくれている先輩が先輩が、って思えば、 「さん? 大丈夫ですよ。もう、大丈夫です。」 ハタと気付くと、先輩が私の手を撫でていた。シャツを掴んだまま放さないので、困っていたのかもしれない。 私は恥ずかしくなって手を緩めた。 「続? どうしたんだ?」 聞いたことのある声に顔を上げると、そこには竜堂先生と、きれいな女の人と、中学生と高校生くらいの男の子がいた。 え? ここは? 女の人が湯気の立つマグカップを渡してくれる。「火傷しないようにね?」と言いながらカップを渡してくれるその女の人は、とても優しい笑顔をしていて、少しずつ縮こまっていた体が緩くなってくる。 「大丈夫ですか?」 中学生くらいの男の子が心配そうな顔をして首を傾げる。 私はなんとか頷く。 すると、男の子は天使のような笑みを浮かべて、「よかった。」と呟く。 「続兄貴、乱暴にしたんじゃねえの?」 高校生くらいの男の子が言うと、先輩は鋭い視線を男の子に向け、男の子は首を竦めた。 「、大丈夫か?」 「りゅ、竜堂先生、こ、ここは・・・」 「ああ、うちだ。」
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