亀姫夢話
竜堂先生に無事レポートを届けて、「なんでお前もいるんだ?」と言われた紅竜王さまは「茉莉ちゃんからの伝言です。今晩は茉莉ちゃんが来てくれるそうなので、早く帰ってきてくださいね、とのことです。」と答えた。 そして。 なんで紅竜王さまと二人っきりでお茶してるの、私は!? ぶつかってしまったお詫びと、一人でクラス全員分のレポートを運ばせてしまった竜堂先生からのお詫びの代わり、と紅竜王さまはそのまま紅竜王さまの顔にぼぅっとしていた私を引っ張って近くの喫茶店にまで連れてきてしまった。案内してもらったし、レポートを運ぶのを手伝ってもらったから差し引きゼロです!という私の返答は無視されてしまった。 「奢りますから、お好きなものを頼んでください。」 つい最近まで高校生でアルバイトもしたことなかった私のお小遣いは、鶉の涙ほど。だから、喫茶店のケーキだなんて、千円札出してちょっとしかおつりのこない値段なんて、目の回るようなもので、おいそれと頼めない。 人に奢ってもらうのも気がひけるし・・・。 そんなことを考えていると、それを看破したかのように紅竜王さまはにこりと笑った。 「遠慮なさらなくてもいいんですよ、さん。僕が奢りたくて奢っているんですからね。こういうときは、素直に奢られる方が礼儀にかなっているんです。」 そ、そうなのかなあ。 うん、そういえば、遠慮しすぎるのも失礼だ、っていうのを聞いたことがある。 私はざっと見渡して、ショートケーキを頼んだ。紅竜王さまはウェイトレスのお姉さんにコーヒーとケーキセットを頼む。 え? 「セットの飲み物は、紅茶でいいですか?」 「え、は、はい、」 セット頼んでなんか、ないよね・・・? ちらっと紅竜王さまの顔を盗み見ると、にっこりと笑われた。 ・・・・・・うう、やっぱりきれいだあ。 ちょっとどきどきする。 だって、今まで学校にいた男の子たちって、みんな乱暴で意地悪で、こっちのこと女の子なんて全然思ってないような子たちばっかで。 でも、この人は優しくて、丁寧で、きれいで、大人で、 ステキだなあ。 こういう人を、白馬の王子さま、って言うんだろうなあ。 そういえば、西遊記の白馬って、白竜王の子供だ、ってお父さんが前に言ってたなあ。 関係ないってば! もう、なんで私って、こう、夢のことしか考えてないんだろう。 もう大学生なんだから、もっと現実のこと見なきゃ。 そうよ、せっかくの機会なんだから。 「あ、あの、竜堂、先輩?」 「はい。なんでしょう?」 たぶん、私は今真っ赤になってる。 恥ずかしいなあ。 「あの、先輩は竜堂先生のご兄弟なんですよね?なら、共和学院の創立者の、お孫さんですよね?」 「そうですが。」 先輩は訝しげな顔をする。 「あ、あの、じゃあ、おじいさまから、亀崎、っていう人のこと、聞いたことありませんか?」
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