どうしてだろう。
目で追い続ける。 少し大きめのレギュラージャージに身を包み、真剣なのか呆けているのかよく判らない表情でマネージャー業を黙々とこなしている、彼女。 かと思えば、お疲れさま、と練習の疲れがどこかへ飛んでいきそうな笑顔を振りまき、スポーツドリンクを部員一人一人に配って歩く、彼女。 そして、教室で、授業中、友達と手紙を交換し、教師に見つからないようにくすくすと笑っている、彼女。 そんな彼女を、テニスや勉強に打ち込まなければならないのに、無駄なことに使う時間などないはずなのに、いつの間にやら目で追い続ける、自分。 思い出すのは、包帯を巻いた足を興味深い観察対象でも見るかのように注視していたあの、視線。 「もう、テニスできないらしいよ。」 落胆も後悔も焦燥も悲嘆も絶望も拒絶も、そういったものはなにもない声と目。 彼女にとってのテニスとは、一体なんだったのか。 好きじゃなかったのだろうか。 なら、怪我をしたのに男子テニス部のマネージャーに誘った自分を、彼女は恨んでいるのだろうか。 「海堂くん、なにぼぅっとしているの?」 なんでもねぇ、と答えると、は首を傾げて眉間にしわを寄せた。 「いつもより集中力欠けてるよ。海堂くんのことだから、体調管理はしっかりしているだろうけど、油断はできないからね。体調が悪いようならすぐに言ってね。大事になる前に休養をとった方が、一回倒れてからよりも治りがいいんだからね。」 はそう言って俺にスポーツドリンクを渡し、他の部員にも配る。 喉を潤しながら、横目で彼女を目で追う。 誰よりテニスがうまかったのに、 誰より期待されていたのに、 呆気なく道を閉ざされ、 けれどもそれを歯牙にもかけていない、 そもそもテニスが好きだったのかもよく判らない、 そんな、彼女。 なぜ彼女を目で追うのか、わかるようになるのはまだ先の話。
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