サヨラ。

 

 ホグワーツ特急の汽笛が遠ざかるのを聞きながら、セブルスは目の前に置かれた本の山を睨みつけた。

 本日、ここを卒業した同級生が餞別だと嘯いて、この七年間で集めた魔法薬学に関する資料を全て置いていったのである。貴重な研究書などもあるからありがたいことではあるのだが、「やさしい魔法薬学」などという本まであるところを見ると、恐らくただ単に邪魔だったから持って帰りたくなかったのだろうということは容易に予測できた。

 二人が卒業を機に道を分かつとは、考えてもみなかった。

 は当然セブルスがどこかの研究所かどこかに行くと思っていたし、セブルスは当然がホグワーツに残るものだと思っていた。

 いや、それ以前に、二人とも卒業というものに実感を覚えていなかっただけなのだ。

 それでもまあ、結局こんなにあっさりと別れたのも、本当に離れ離れになることはないと信じているからなのだろうけれども。

 浮遊の術を本の山にかけ、地下にある個室に運び込む。魔法薬学の教授の助手を務めることが決まってから与えられた部屋で、寮の四人部屋と同じ位の大きさを一人で使うことができるので、からの餞別をとりあえず収納してもまだ場所が余る。どうせこれからまだまだ資料は増えるのである。収納場所が余っていて問題はない。

 ぐるりと首を回し、関節を鳴らす。

―――セブ、残るんだ。

    私? 私は・・・うん、教授が出てくからね。彼女についてく。

 そうか、と自分は頷き、そうよ、と彼女も頷いた。

 先程、ホームで見送ったときも、特に感慨深い別れの言葉など交わさなかった。

 本当に離れ離れになることなど、絶対にないから。

 たった一つの、死という永遠の離別以外。

 それでも、束の間の別れに何か挨拶くらいすればよかったのかもしれない。

 そう思いながら、の本を一冊開く。

 すると、彼女の声と寸分違わぬ音が部屋に響いた。

「Good-bye, my dear!」

 

 

 

 

反省会
 サヨナラ、私の愛しい人!

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